日本の文化は質素を美徳とする「侘び寂びの文化」です。それは仏教の教えるこの世のものは全て無常という思想に影響を受けています。
ですから贅沢をなんとなく嫌う傾向があります。
私は中年になってからカトリックの洗礼を受けましたがまぎれもないない日本人なので贅沢はいけないと思っています。人間は清貧であるべきだとも思っています。
一方、欧米文化は「侘び寂びの文化」ではありません。贅沢に対する嫌悪感がありません。
何故こんなことをあらためて書きだしたかと言うと、最近、豪華客船パシフィック・ヴィーナスに乗ってしみじみ感じたからです。それは横浜から名古屋までの一夜のクルージングでした。船内の素晴らしい内装や乗員の質の高い接客に感動しました。
しかし一方でこれは日本の伝統文化になじまないと強く感じたのです。豪華客船に乗ると楽しいのですが何故か居心地が悪いのです。違和感を感じます。贅沢過ぎるので少し罪悪感する感じます。
結論的に言えば、豪華客船に乗って楽しむ趣味は日本人にはなじみにくい趣味なのです。
そこで豪華客船のことを少し調べてみました。
世界の豪華客船の年間利用者は2000万人と言われていますが、日本人はたったの18万人前後です。その数は過去25年間横ばいです。増加しないのです。米国では1990年にクルーズ人口が350万人だったのが、2000年には690万人、2011年には1044万8000人と約3倍に増えています。
海外の豪華客船は22万トンと巨大な船を含めて数百隻もありますが、日本には3隻しかありません。
日本人の利用者数の18万人比較をみると日本のGDPが世界3位なことに対してあまりにも少な過ぎます。豪華客船の数もたった3隻で、世界全体の数百隻に比較してひどく少ないのです。
誤解なさらないで下さい。日本の豪華客船の数がたった3隻だからいけないと非難しているのではありません。この数の比較を一例として欧米の文化と日本の文化の違いを明らかにしようとしているのです。それは人生に対する考え方の違いに過ぎないのです。
船といえばもう一つの比較も良い例です。
過去25年間で日本にあるヨットの数が3000隻前後で増加しないのです。急に絶滅する趣味ではありませんが、ヨットの数が少しずつ減っているようです。私はヨットの趣味を25年間していましたので全国のヨットハーバーの数やヨットの数を丁寧に調べていましたので、この数は大きくは間違っいないと思います。
欧米の人口とヨット数の正確な統計はありませんが日本のヨット数は明らかに少ないようです。
その原因は、それらが「侘び寂びの文化」の対局にある趣味だからです。
そして以下の伝統的習慣も原因の一つになっています。
江戸時代の末期まで、働く日本人は盆暮れ以外は休みません。
明治の文明開化で土曜日が半ドン、日曜日は休みになりました。最近は国民の祝日も数が増えました。しかし現役の日本人は長期のバカンスをとれません。とると出世しないのです。
そして昔も現在も、多くの日本人にとって職業はその人の人生の全てを捧げるべきものなのです。ですから仕事の邪魔になるような趣味は罪悪でした。
勿論、日本人もいろいろですから、趣味に一生を費やす人もいます。そかしその数は非常に少ないのです。
一方欧米人の多くの人は、趣味こそが自分の個性を発揮できる重要なものと信じています。個性を大切にする文化です。
すると職業はその趣味の費用を得る手段になります。当然、全人生を職業へ捧げる人は非常に少なくなります。長期のバカンスは個人の権利として認められる文化なのです。
長期の休みが無ければ長期の客船の旅も出来ません。手間のかかるヨットの趣味など学生時代の部活動としか考えられません。
勿論、どんな国にも例外はあります。職業へ人生を捧げる欧米人も沢山います。しかし大多数はそうではありません。
以上の理由に加えてもう一つの彼我の文化の大きな相違があります。
欧米人は船に乗って楽しむという文化を持っています。
日本人は船は漁業に使うか物資を運ぶ仕事以外に使ってはいけないという牢固とした伝統を持っています。
この違いは25年間のヨットの趣味をしている間に身に沁みて体験しました。
ヨットに乗っていると海上では漁船や貨物船が優先です。欧米では帆船であるヨットが航路の優先権をもっているのに、日本ではヨットが舵を切って、航路をあけなければいけません。ヨットは遊びで、他の船は仕事をしているので当然と考えます。
港に入ればヨットは一番不便な、港口に近い岸壁に停めるのが原則です。絶対に漁船の邪魔をしてはいけません。
岸壁で舫いロープを整理していると、釣り人が近づいてきます。
そしてこの船は沖で釣りを楽しむために持っているのかと聞いてきます。
私が釣りはしません。帆走を楽しむのですと答えると、いささか軽蔑したようにあいまいな笑顔をして去って行きます。釣りをしないのに船を持っていることがどうしても理解できないのです。
豪華客船に乗って遠洋を渡りながら美味しい食事を楽しむ。レストランの大きな窓の外には果てしない海が白波を立てている。船の上ではゆったりと時間が流れて行きます。それだけを楽しむのが客船に乗る趣味です。
欧米人と日本人の趣味の違いは人生観の違いによって生じるのです。根が深いのです。
それぞれの国々の違った文化を大切に尊重する。するとこの地球は住んで楽しい惑星になると私は信じています。ですからこそ他国の趣味も理解することも大切なことと信じています。
下の一番目の写真は日本の豪華客船の飛鳥II(50,146トン)です。二番目は世界最大の豪華客船の、オアシス オブ ザ シーズ号、(22万5千トン)の内部の様子です。
三番目の写真はパシフィック・ヴィーナスの窓から撮った横浜の夜景です。四番目はその船内のピアノです。そして最後の写真は私が帆走を楽しんでいたヨットの写真です。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)
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=======参考資料==================
日本と海外の豪華客船の一覧表(出典:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%82%BA%E5%AE%A2%E8%88%B9)
======日本の豪華客船================
•郵船クルーズ(日本郵船系)、 飛鳥II:50,142トン
•商船三井客船(商船三井系) 、にっぽん丸:22,472トン
•日本クルーズ客船(SHKライングループ) ◦ぱしふぃっくびいなす:26,518トン
======海外の豪華客船================
•アイーダ・クルーズ(ドイツ)
アイーダディーヴァ級 (総トン数69,203t 2007年就航)アイーダヴィータ級 (総トン数42,289t 2002年就航)アイーダカラ (総トン数38,557t 1996年就航)•MSCクルーズ(イタリア)
MSC ファンタジア級 (総トン数137,936t 2008年就航)MSC ムジカ級 (総トン数90,409t 2006年7月就航)MSC リリカ級 (総トン数59,058t 2003年6月就航)MSC アルモニア級 (総トン数58,714t 2001年6月就航)MSC メロディ(総トン数35,143t 1982年4月就航)•オーシャニア・クルーズ(アメリカ)
マリーナ級 (総トン数66,084t 2011年就航)レガッタ級 (総トン数30,277t 1998年就航) ノーティカ (2000年就航)•カーニバルクルーズライン(アメリカ)
カーニバル・ドリーム級 (総トン数128,251t 2009年就航) カーニバル・ブリーズ(総トン数128,251t 2012年就航)カーニバル・コンクェスト級 (総トン数110,239t 2002年就航)カーニバル・デスティニー級 (総トン数101,353t 1996年就航) カーニバル・トライアンフ(総トン数101,353t 1999年就航)カーニバル・スピリット級 (総トン数85,920t 2001年就航)ファンタジー級 (総トン数70,367t 1990年就航)•キュナード・ライン(イギリス/アメリカ)※カーニバルクルーズ傘下
クイーン・メリー2(総トン数148,528t 2004年就航)クイーン・エリザベス (総トン数90,901t 2010年就航)クイーン・ヴィクトリア (総トン数90,049t 2007年12月就航)•クラシック・インターナショナル・クルーズ(ポルトガル)
プリンセス・ダナエ (総トン数16,531t 1955年就航)•クリスタル・クルーズ(アメリカ)
以下省略
ですから贅沢をなんとなく嫌う傾向があります。
私は中年になってからカトリックの洗礼を受けましたがまぎれもないない日本人なので贅沢はいけないと思っています。人間は清貧であるべきだとも思っています。
一方、欧米文化は「侘び寂びの文化」ではありません。贅沢に対する嫌悪感がありません。
何故こんなことをあらためて書きだしたかと言うと、最近、豪華客船パシフィック・ヴィーナスに乗ってしみじみ感じたからです。それは横浜から名古屋までの一夜のクルージングでした。船内の素晴らしい内装や乗員の質の高い接客に感動しました。
しかし一方でこれは日本の伝統文化になじまないと強く感じたのです。豪華客船に乗ると楽しいのですが何故か居心地が悪いのです。違和感を感じます。贅沢過ぎるので少し罪悪感する感じます。
結論的に言えば、豪華客船に乗って楽しむ趣味は日本人にはなじみにくい趣味なのです。
そこで豪華客船のことを少し調べてみました。
世界の豪華客船の年間利用者は2000万人と言われていますが、日本人はたったの18万人前後です。その数は過去25年間横ばいです。増加しないのです。米国では1990年にクルーズ人口が350万人だったのが、2000年には690万人、2011年には1044万8000人と約3倍に増えています。
海外の豪華客船は22万トンと巨大な船を含めて数百隻もありますが、日本には3隻しかありません。
日本人の利用者数の18万人比較をみると日本のGDPが世界3位なことに対してあまりにも少な過ぎます。豪華客船の数もたった3隻で、世界全体の数百隻に比較してひどく少ないのです。
誤解なさらないで下さい。日本の豪華客船の数がたった3隻だからいけないと非難しているのではありません。この数の比較を一例として欧米の文化と日本の文化の違いを明らかにしようとしているのです。それは人生に対する考え方の違いに過ぎないのです。
船といえばもう一つの比較も良い例です。
過去25年間で日本にあるヨットの数が3000隻前後で増加しないのです。急に絶滅する趣味ではありませんが、ヨットの数が少しずつ減っているようです。私はヨットの趣味を25年間していましたので全国のヨットハーバーの数やヨットの数を丁寧に調べていましたので、この数は大きくは間違っいないと思います。
欧米の人口とヨット数の正確な統計はありませんが日本のヨット数は明らかに少ないようです。
その原因は、それらが「侘び寂びの文化」の対局にある趣味だからです。
そして以下の伝統的習慣も原因の一つになっています。
江戸時代の末期まで、働く日本人は盆暮れ以外は休みません。
明治の文明開化で土曜日が半ドン、日曜日は休みになりました。最近は国民の祝日も数が増えました。しかし現役の日本人は長期のバカンスをとれません。とると出世しないのです。
そして昔も現在も、多くの日本人にとって職業はその人の人生の全てを捧げるべきものなのです。ですから仕事の邪魔になるような趣味は罪悪でした。
勿論、日本人もいろいろですから、趣味に一生を費やす人もいます。そかしその数は非常に少ないのです。
一方欧米人の多くの人は、趣味こそが自分の個性を発揮できる重要なものと信じています。個性を大切にする文化です。
すると職業はその趣味の費用を得る手段になります。当然、全人生を職業へ捧げる人は非常に少なくなります。長期のバカンスは個人の権利として認められる文化なのです。
長期の休みが無ければ長期の客船の旅も出来ません。手間のかかるヨットの趣味など学生時代の部活動としか考えられません。
勿論、どんな国にも例外はあります。職業へ人生を捧げる欧米人も沢山います。しかし大多数はそうではありません。
以上の理由に加えてもう一つの彼我の文化の大きな相違があります。
欧米人は船に乗って楽しむという文化を持っています。
日本人は船は漁業に使うか物資を運ぶ仕事以外に使ってはいけないという牢固とした伝統を持っています。
この違いは25年間のヨットの趣味をしている間に身に沁みて体験しました。
ヨットに乗っていると海上では漁船や貨物船が優先です。欧米では帆船であるヨットが航路の優先権をもっているのに、日本ではヨットが舵を切って、航路をあけなければいけません。ヨットは遊びで、他の船は仕事をしているので当然と考えます。
港に入ればヨットは一番不便な、港口に近い岸壁に停めるのが原則です。絶対に漁船の邪魔をしてはいけません。
岸壁で舫いロープを整理していると、釣り人が近づいてきます。
そしてこの船は沖で釣りを楽しむために持っているのかと聞いてきます。
私が釣りはしません。帆走を楽しむのですと答えると、いささか軽蔑したようにあいまいな笑顔をして去って行きます。釣りをしないのに船を持っていることがどうしても理解できないのです。
豪華客船に乗って遠洋を渡りながら美味しい食事を楽しむ。レストランの大きな窓の外には果てしない海が白波を立てている。船の上ではゆったりと時間が流れて行きます。それだけを楽しむのが客船に乗る趣味です。
欧米人と日本人の趣味の違いは人生観の違いによって生じるのです。根が深いのです。
それぞれの国々の違った文化を大切に尊重する。するとこの地球は住んで楽しい惑星になると私は信じています。ですからこそ他国の趣味も理解することも大切なことと信じています。
下の一番目の写真は日本の豪華客船の飛鳥II(50,146トン)です。二番目は世界最大の豪華客船の、オアシス オブ ザ シーズ号、(22万5千トン)の内部の様子です。
三番目の写真はパシフィック・ヴィーナスの窓から撮った横浜の夜景です。四番目はその船内のピアノです。そして最後の写真は私が帆走を楽しんでいたヨットの写真です。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)





=======参考資料==================
日本と海外の豪華客船の一覧表(出典:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%82%BA%E5%AE%A2%E8%88%B9)
======日本の豪華客船================
•郵船クルーズ(日本郵船系)、 飛鳥II:50,142トン
•商船三井客船(商船三井系) 、にっぽん丸:22,472トン
•日本クルーズ客船(SHKライングループ) ◦ぱしふぃっくびいなす:26,518トン
======海外の豪華客船================
•アイーダ・クルーズ(ドイツ)
アイーダディーヴァ級 (総トン数69,203t 2007年就航)アイーダヴィータ級 (総トン数42,289t 2002年就航)アイーダカラ (総トン数38,557t 1996年就航)•MSCクルーズ(イタリア)
MSC ファンタジア級 (総トン数137,936t 2008年就航)MSC ムジカ級 (総トン数90,409t 2006年7月就航)MSC リリカ級 (総トン数59,058t 2003年6月就航)MSC アルモニア級 (総トン数58,714t 2001年6月就航)MSC メロディ(総トン数35,143t 1982年4月就航)•オーシャニア・クルーズ(アメリカ)
マリーナ級 (総トン数66,084t 2011年就航)レガッタ級 (総トン数30,277t 1998年就航) ノーティカ (2000年就航)•カーニバルクルーズライン(アメリカ)
カーニバル・ドリーム級 (総トン数128,251t 2009年就航) カーニバル・ブリーズ(総トン数128,251t 2012年就航)カーニバル・コンクェスト級 (総トン数110,239t 2002年就航)カーニバル・デスティニー級 (総トン数101,353t 1996年就航) カーニバル・トライアンフ(総トン数101,353t 1999年就航)カーニバル・スピリット級 (総トン数85,920t 2001年就航)ファンタジー級 (総トン数70,367t 1990年就航)•キュナード・ライン(イギリス/アメリカ)※カーニバルクルーズ傘下
クイーン・メリー2(総トン数148,528t 2004年就航)クイーン・エリザベス (総トン数90,901t 2010年就航)クイーン・ヴィクトリア (総トン数90,049t 2007年12月就航)•クラシック・インターナショナル・クルーズ(ポルトガル)
プリンセス・ダナエ (総トン数16,531t 1955年就航)•クリスタル・クルーズ(アメリカ)
以下省略